2015年12月07日

好きな話

小さな親切という本だったと思うが昔読んで記事内容が何となく気に入って書き写しておいた話が出てきた。今の中国ではこのような光景はないかも知れないが心温まる話だ。

「三年前の冬、中華人民共和国へツアーで旅行した。上海のある店でのこと。仲間とはぐれた私と娘は、店員さんの教えてくれた階下でトイレを探していたが、階下は倉庫のようになっていてわからない。ちょうど前を質素な身なりをした年配のご夫婦が歩いていた。

声をかけると二人は、私たちがトイレを探していることを察してくれたらしい。
おばあさんは、おじいさんに何か言いおいて「私についてこい」という身振りをして、先に立ってどんどん歩きはじめた。長い廊下を何度か曲がってから立ち止まり、ニッコリして、あそこを左に折れればいいと指さす。

中国のトイレにはドアがない所もあり、トイレットペーパーも備え付けていない所が多い。おばあさんは、私たちが困ってはいけないと思ったのだろう。色あせた上着の裾をめくり、なえたズボンのポケットから、黒いゴワゴワのチリ紙を取り出し、私と娘に一枚ずつ手渡してくれた。残った一枚はもとの折り目に沿って大事そうにたたみ、また、ポケットにしまった。

私たちがトイレを見つけて振り返ると、おばあさんはニッコリしてうなずき、くるっと向きをかえて、トコトコとおじさんの待つもとの方向にもどっていった。「持って帰ろうね」私たちはおばあさんのくれたチリ紙を大切に持ち帰り、アルバムにはさんだ。

言葉もつうじない、この世で二度とあうこともない私たちに、さりげなく示された親切。それは、私たちの心に、温かい日中友好の灯をともし続け、人としてのありようを教え続けてくれている。」
posted by Tommy at 04:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 追憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする