2015年08月17日

老人と少女

小学校に上がる前の少女が自分の持っていたキャラメルを一粒その老人に手渡したのが始まりだった。

村の小さな祭りに連れられて出かけた少女がその日買って貰った一箱のキャラメルを大事そうに手に持って歩いていた。薄汚い服を着た見知らぬ老人が独り道端に座り人通りを何気なく眺めていた。そこを通りかかった少女と眼があった。少女は何を思ったのか大事にしていたキャラメルの箱から一粒取り出してその老人に黙って手渡した。老人はいたく感激したらしく少女の素性を村人に聞きまわった。それから一月ほど経って少女に子供向けの雑誌が定期的に届くようになった。それは二年ほど続いて来なくなった。老人は独り暮らしで静かに息を引き取っていた。
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2015年08月16日

二人の歴史

ふと思い出した50年以上も前の話だが、人里離れた小高い山の裾に独りで生活している老人が住んでいた。

どうやって生計を立てていたのか知らないが、わら葺の小さな家のまわりは家庭菜園のように野菜類が育っていた。近くには川が流れて当時はナマズ、ハヤ、コイ、ウナギ等魚類は豊富に獲れた。山には野生のイモ類や果物も十分にあり食べ物に不自由はなかったのかも知れないが気になる存在だった。村の大人に聞いても誰一人その老人の素性は知らなかった。

或る時、村に噂が流れた。村のはずれに結婚し子供も儲けていたが、何年も前に家族と別れて独りで掘立小屋に住んでいた老婆がいた。或る時彼女が数キロも離れたわら葺屋根の老人の所で一緒に住み始めたという。それからしばらくして二人とも亡くなったと聞いた。二人の間にどの様な歴史があったのか今は誰にも分からない。
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